横浜市歯科口腔保健推進計画概要版 

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「目的・計画期間」
<目的> 歯と口腔の健康は、生活の質や心身の健康を保つ基礎であり、生涯を自分の歯で過ごし、健康を維持していくために、ライフステージに応じた取組は重要です。
このような状況から制定された「横浜市歯科口腔保健の推進に関する条例」に基づいて、市民の生涯にわたる歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、「歯科口腔保健推進計画」を横浜市の総合的な健康づくりの指針である「第3期健康横浜21」と一体的に策定します。
また、本市の関連する他計画や、国や県の計画等とも整合性を図りながら推進していきます。
健康で豊かな生活の実現に向け、歯と口腔の健康づくりに市民自らが取り組めるよう、行政、関係機関や団体がそれぞれに求められる役割を十分理解し、相互連携のうえライフステージ等の現状や課題に応じて、歯科口腔保健の推進に取り組むことを目指します。
<計画期間>令和6年度(2024年度)から令和17年度(2035年度)まで

「基本目標・行動目標」
<基本目標>は「生涯を通じて食事や会話ができる」
<行動目標>は「1 むし歯・歯周病を予防する」「2 口腔機能の健全な発育・発達・維持向上に努める」

「関係者の役割」
<歯科医療等関係者> (歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士等)
・かかりつけ歯科医や施設の協力歯科医療機関として、定期的な歯科健診や専門的な口腔ケアを提供します。
・市の施策等に協力し、適切な歯科医療及び歯科口腔保健指導を実施します。
・自らの技術の向上等のため、研修や人材育成等をすすめます。
<市民>
・自らが歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、毎日の口腔ケアや定期的な歯科健診などにより、むし歯や歯周病などの予防や早期治療に取り組み、生涯を通じて食事や会話ができるよう目指します。
<横浜市>
・歯科医療等関係者及びその他事業者・関係機関・団体等と連携しながら、様々な施策を展開します。
・国や県の動向を注視するとともに、地域の歯科口腔保健の現状を把握し、課題解決に向けて適切に情報発信し、取組を推進します。
<保健医療等関係者、地域活動団体及び事業者等>(保健、医療、福祉、介護、保育、教育)
・歯と口の健康の重要性について理解し、それぞれの業務において歯と口腔の健康づくりに取り組みます。
・歯科医療等関係者と連携して、子どもとその養育者、事業所の従業員、地域住民、日常生活において適切な口腔ケアが困難な人の家族や支援者等に対し、歯と口腔の健康づくりについて普及啓発します。

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歯科口腔保健の推進に関する現状と課題・主な施策「ライフステージ・対象像に着目した現状と課題・主な施策」

<妊娠期の現状と課題>
妊婦歯科健康診査の受診率は増加傾向ですが、妊娠中は、ホルモンバランスの変化等により口の中の困りごとが生じやすく、歯と口腔の健康に関する重要な時期のため、引き続き啓発を行うことが必要です。
<妊娠期の主な施策>
・妊娠中の口腔ケアの重要性について理解を深め、この時期から家族の歯と口腔の健康づくりに関心が持てるよう、母子健康手帳の交付時に面接を行うほか、個別の相談や健康教育等で正しい知識の普及啓発を行います。
・妊娠期の様々な機会にあわせて、妊婦歯科健康診査の受診の必要性や、かかりつけ歯科医を持ち継続的に歯科健診を受ける重要性を、多くの妊婦が認識できるよう啓発を行います。
<乳幼児期の現状と課題> 
むし歯のない児が増える一方、一人で多くのむし歯がある児も存在しています。
乳幼児期は口腔機能が発育・発達する大切な時期です。食生活や歯みがきの習慣なども確立に向かう時期なので、口腔機能の健全な発育・発達につながる生活習慣を身に付けられるよう支援等が必要です。
<乳幼児期の主な施策> 
・むし歯予防に加え、指しゃぶりといった口腔習癖の相談や離乳食・幼児食の食べ方などの普及啓発など、健全な口腔機能の発達の支援に取り組みます。
・食事や間食の習慣等の生活環境、むし歯の状況等の健康状態、養育者の状況や考えを把握し、適切に養育ができるよう支援します。
・かかりつけ歯科医をつくり、口腔機能の発達段階に応じた適切な支援を受ける重要性を普及啓発します。
・日本語での情報収集が難しい外国人に対し、外国語版啓発媒体を用いて歯科口腔保健の正しい知識を啓発し、適切に養育できるよう支援します。
<学齢期の現状と課題>
12歳児の1人平均むし歯数は減少傾向ですが、成人期の歯周病や口腔機能低下を予防するため、栄養バランスの良い食事を規則正しくとることや、よく噛んで食べる習慣、むし歯や歯肉炎を予防するためのセルフケアの方法を身に付けることが必要です。
<学齢期の主な施策> 
・児童・生徒が歯と口腔の健康の大切さに理解を深め、主体的にむし歯や歯肉炎予防のセルフケアに取り組み、歯や歯肉の状態を自ら観察できる力を育てるため、啓発に取り組みます。
・むし歯や歯肉炎を予防するため、かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることを促します。
・児童・生徒の発達の段階や特性等に応じた歯科口腔保健指導について教職員や保護者へ啓発を行い、歯と口腔のケアの重要性に関する理解を深めます。
<成人期の現状と課題>
過去1年間に歯科健診を受診した人の割合は、男女とも若い年代で受診した人が少ない傾向でした。
職域・地域の連携に着目した取組など、むし歯や歯周病、口腔機能低下の予防に取り組むことが必要です。
<成人期の主な施策> 
・むし歯や歯周病の予防のため、適切なセルフケアをする習慣や、かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることの重要性を啓発します。
・オーラルフレイルを理解し、口腔機能を維持できるよう、普及啓発に取り組みます。
・学校や事業所等と連携して、学生や働き世代への歯科口腔保健に関する情報を啓発します。
・糖尿病等の生活習慣病対策と連携し、全身疾患と歯科疾患との関連性の啓発や、生活習慣改善の支援に取り組みます。

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<高齢期の現状と課題>
自分の歯を多くもつ高齢者の割合は増えていますが、年齢が高くなるほど歯周病が進みやすくなります。また、オーラルフレイルが進むことで、要介護状態を引き起こすことが明らかになっています。いつまでも健康に生活できるよう、地域の介護予防の取組と連動させた本人や支援者への支援が必要です。
<高齢期の主な施策>
・歯の喪失や加齢等に伴う口腔状況の変化に応じた適切な口腔ケアの習慣や、かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることの重要性を啓発します。
・市民や関係職種がオーラルフレイルに関する理解を深め、予防や口腔機能の維持改善に取り組めるよう、地域の介護予防活動グループ等の団体・関係機関や保健・医療・福祉・介護の多職種と連携して、普及啓発に取り組みます。
・要介護高齢者の特性に応じて、家族や介助者など支援者に対し、歯と口腔の健康について理解を深め、本人が適切な口腔ケアを受けられるよう支援します。
<障害児及び障害者の現状と課題>
障害児及び障害者入所施設において、歯科口腔保健の取組が進んでいますが、在宅で生活や療養をされている人の現状は明らかになっていません。
障害児や障害者は、自ら口腔ケアを行うことなどが難しい場合があり、むし歯や歯周病のリスクが高い場合があります。
障害の特性等に応じたきめ細やかな支援が必要であり、家族や介護者など支援者等の関わりが重要です。
<障害児及び障害者の主な施策>
・歯の喪失や口腔機能低下を予防し、食べることや話す機能を長く維持できるように支援します。
・本人、家族や介助者など支援者に対し、歯と口腔の健康の重要性について理解を深めます。
・身近な地域で、かかりつけ歯科医による口腔ケアを受けられるよう、歯科医療等関係機関と環境整備を進めます。
・障害福祉の関係機関・団体等と連携し、障害児及び障害者の特性に応じた歯科口腔保健の正しい知識の普及啓発に取り組みます。

「ライフステージ・対象像に共通する現状と課題・主な施策」
<災害に備えた対策の現状と課題>
・災害に備えて歯ブラシ・デンタルリンスなどの口腔ケア用品を準備している人は約2割でした。災害時の口腔ケアの重要性や、非常持出品に口腔ケア用品を準備しておくことの普及啓発が必要です。
<災害に備えた対策の主な施策>
・災害時の口腔ケアの重要性や、飲料水等の確保が難しい場面での口腔ケアの方法等についての普及啓発を進めます。
・避難グッズに歯ブラシ、デンタルリンスなどの口腔ケア用品の準備をしておくよう普及啓発を進めます。
<情報共有と情報発信の現状と課題>
関係機関・団体間での取組や連携が促進されるよう、各種連絡会等を通じた情報共有が大切です。高齢者や障害者、外国人は必要な情報を受け取りにくい状況があるため、やさしい日本語や多言語に対応する視点など、対象者に応じた情報の内容や発信方法の工夫が求められています。
<情報共有と情報発信の主な施策>
・関係機関・団体等の連絡会等の場において、情報共有を行い、情報発信・意見交換を進めます。また、機関紙・広報誌等と連携した広報を行います。
・歯や口腔の健康に関する各種リーフレットのやさしい日本語版、多言語版を作成し、情報発信を進めます。
<実態把握の現状と課題>
各ライフステージや対象像に行われる歯科健康診査の結果や、事業評価、アンケートをはじめとした意識調査等の結果から、市民の歯科口腔保健の現状分析を行っています。今後も、市民の歯科口腔保健の実態を分析し、ニーズの把握を進めることが必要です。
<実態把握の主な施策>
・歯科健康診査の結果や、歯科口腔保健事業等から得られる情報を収集し、市民の歯科口腔保健にかかる実態分析を進めます。
・市民の歯科口腔保健にかかる実態分析とあわせ、県や国等が有するデータを積極的に活用し、課題の抽出やニーズの把握を行います。

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「推進・評価体制」
歯科口腔保健推進計画の推進にあたって、市は、各施策の進捗状況や各種指標の達成状況を適宜把握し、「健康横浜21推進会議」及び「歯科口腔保健推進検討部会」を通じて共有していきます。
市は、「健康横浜21推進会議」及び「歯科口腔保健推進検討部会」からの提言や、把握した検証結果に基づき評価を行います。

「計画の評価」
<評価スケジュール>
目標達成に向けた効果的な施策展開を図るため、第3期健康横浜21とあわせて、令和11年度(2029年度)には中間評価、計画最終年の前年度である令和16年度(2034年度)には、取組の最終評価を実施します。

<評価と指標設定の考え方>
基本目標及び行動目標の達成度を測るため、ライフステージにあわせて設定した12の「指標」の変化を確認して評価します。
「指標」は、適切な進捗管理と評価を行うことで、さらなる取組の推進を図ることができるものを選定しています。「指標」の設定にあたっては、国の指標や、最終評価まで安定して把握できることも考慮しています。

<目標・指標とライフステージの関係>
 ・基本目標は「生涯を通じて食事や会話ができる」とします。
 ・行動目標は次の2つです。
 1 むし歯・歯周病を予防する
 2 口腔機能の健全な発育・発達・維持向上に努める

各ライフステージにおける指標は次のとおりです。
・妊娠期の指標は、妊婦歯科健康診査受診率
・乳幼児期の指標は、3歳児でむし歯のない者の割合および3歳児で4本以上のむし歯のある者の割合
・学齢期の指標は、12歳児でむし歯のない者の割合および中学生における歯肉に異常のある者の割合、
・成人期および高齢期の指標は、20歳以上における未処置歯を有する者の割合、40歳以上における歯周炎を有する者の割合、40歳以上における自分の歯が19本以下の者の割合、20代から60代における過去1年間に歯科健診を受けた者の割合、20代から60代における「オーラルフレイル」の言葉を知っている者の割合、50歳以上におけるなんでも噛んで食べることができる者の割合、80歳で20本以上の自分の歯を有する者の割合


発行 
 横浜市健康福祉局健康推進課
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